AVR-X7200W開発者インタビュー Part.1
昨年12月に発表となったデノンAVアンプのフラッグシップモデル、AVR-X7200W。3次元の立体音響を再生する最新機能であるドルビー・アトモスを搭載し、圧倒的な情報量と空間再現力を実現しています。今回は設計者チーム4名にインタビューしました。
昨年12月に発表となったデノンAVアンプのフラッグシップモデル、AVR-X7200W。
3次元の立体音響を再生する最新機能であるドルビー・アトモスを搭載し、圧倒的な情報量と空間再現力を実現しています。
今回は設計者チーム4名にインタビューしました。
9.2ch
AVサラウンドレシーバー
AVR-X7200W
希望小売価格:350,000円(税抜価格)
発売時期:2015年1月上旬
製品の詳細はこちらをご覧ください。
(写真左から)
寒川大輔
D&M CSBUデザインセンター
技師
AVR-X7200W電源、ネットワーク系設計担当
高橋佑規
D&M CSBUデザインセンター
技師
AVR-X7200Wデジタル、アナログオーディオ、パワーアンプ、音質設計担当
鈴木一弘
D&M CSBUデザインセンター
技師
AVR-X7200Wモデルリーダー
緑川慎一
D&M CSBUデザインセンター
技師
AVR-X7200W機構設計担当
■最初に AVR-X7200Wの開発の経緯について、モデルリーダーの鈴木さんにおうかがいします。
鈴木:AVR-X7200Wは、AVR-4520の後継モデルとして開発されました。
AVR-4520は発売してすでに2年が経過していますので、新しい技術をキャッチアップすること、そして、さらなる音質の向上を目指しました。
新技術としてはドルビー・アトモスへの対応、ネットワークではWi-FiやBluetoothの対応、さらにHDMI、4Kへの対応などです。
4Kに関しては4K映像信号(60p、4:4:4、24bit)のパススルーや4K(50/60p)へのアップスケーリングにも対応しています。
また音質に関しても内部の回路レイアウト、電源回路の見直し、新世代のDACの採用などにより格段の進歩を遂げています。
ちなみに4K映像などのコンテンツに対する著作権保護技術「HDCP2.2」に対応する無償アップグレードも、2015年初夏に実施を予定しています。
AVR-X7200Wモデルリーダー 鈴木一弘
■次に本ブログの「私のオーディオ道」にご登場いただいたばかりの高橋さんにおうかがいします。
AVR-X7200Wのアピールポイントとしては、どんな点が挙げられるでしょうか。
高橋:AVR-X7200Wの第一の特長として、コンストラクションとしての機構的な美しさ、そして外観の美しさを挙げたいと思います。
これは「私のオーディオ道」でご紹介したデノンの1970年代のアンプ、PMA-235から学んだことでもあります。
AVR-X7200Wデジタル、アナログオーディオ、パワーアンプ、音質設計担当 高橋佑規
緑川:外観については私からご説明します。まずフロントパネルを見ていただきたいと思います。
基本的なノブのレイアウトなどはAVR-4520と同じですが、ウィンドウ、ドア、そしてノブなどを変更しました。
ユーザーが実際に触れたり操作したりする部分で高級感を出すことで、よりHi-Fi的なオーディオフィーリングを高めました。
AVR-X7200W機構設計担当 緑川慎一
■ウィンドウ、ドア、ノブのどんな点が変わったのでしょうか。
緑川:ボリュームノブとファンクションノブに関してはデザインを変えました。
またボリュームノブを回したときの感触も全く違います。
AVR-4520のノブは回すと軽くてクリック感があるものですが、AVR-X7200Wのノブはトルク感があり、動きに重厚感があります。
ドアの厚みも今までより厚くしました。
またドアの開け閉めは機構を見直し、磁石でドアを引き込む力を強くすることで、高級車のドアを締めるときのような重厚感と機密性が感じられるような、品質の高い感触としました。
もちろんこれらはパーツの精度や組み込み技術が高くなければ実現できないことです。
■ノブやドアは確かに高い質感が感じられます。そのほかにはどんな点が変わりましたか。
緑川:リアパネルが大きく変わりました。
特にスピーカー端子のレアウトが大幅に改善されています。
AVR-X7200Wはスピーカー端子が11チャンネル、合計22個ありますが、これらを全てリアパネルの下部に一列に並べました。
端子はそれぞれスピーカーごとにわかりやすく色分けしています。
これはスピーカーの接続をしやすくすることと、レイアウトとしての美しさを目指したものです。
Photo Caption (左)AVR-X7200Wのリアパネル。22個のスピーカー端子が色分けされ下部に一列に並んでいる。
(右)AVR-4520のリアパネル。スピーカー端子は2列、電源のAC INも下部に並ぶ。
寒川:リアパネルで言えば、電源ケーブルの位置も変わっています。
AVR-4520ではスピーカー端子に並んでパネルの下部にありましたが、今回は独立させて上に持っていきました。
AVR-X7200W電源、ネットワーク系設計担当 寒川大輔
■それはどんな理由からですか。
寒川:今回ノイズをさらに低減するために電源回路の基板を独立させましたので、下部にあるスピーカーケーブルと干渉しない上部に持ってくることができました。
さらに電源のノイズ対策としては、動作周波数を従来の66kHzから132kHzに上げています。
周波数を音響的な可聴帯域から離すことでノイズの低減を狙ったものです。
Photo Caption AVR-X7200Wのリアパネル。右端中央にAC INがある。
緑川:さらにシャーシの下部にも今回新しい工夫があります。
実は底の板に1枚プレートを追加しました。ちょっとわかりにくいのですが、シャーシの下はすべてを覆い隠すようにプレートが被さっています。
追加されたプレートのほうが厚みがあり、これによってシャーシの剛性が格段に上がっています。
Photo Caption 追加されたプレートが底面を覆っている。
■シャーシの剛性を上げたのは構造的な理由ですか。
緑川:音質を向上させるためです。底板の強度があがることでアンプ本体が共振しにくくなります。
音はシャーシの強度でかなり変わるのです。
また今回はさらにアンプを支えてるフットの構造と重さも変わりました。
より肉厚なものとなりましたし、内部のリブもいままでよりも太く、しかも共振を起こしにくいように不均一なリブ構造となっています。
Photo Caption 左側がAVR-X7200Wのフット、右側がAVR-4520のフット。
リブの厚みや構造が異なる。AVR-X7200Wフットはリブが厚く不均一な構造で共振が起こりにくい。
高橋:アンプはあくまでスピーカーを鳴らすためのものですが、それでも振動には大きく影響されます。
デノンの設計思想に内部、外部の不要な振動を排除することで音質や画質の向上を図る「ダイレクト・メカニカル・コンストラクション」という考え方がありますが、これらはまさにその思想に基づいた改善点といえると思います。
外装、リア、フロント、ドア、ボリューム周り、下面、足など、どれもパッと見は同じように見えますが細かい部分でも大きく進化を遂げています。
(Denon Official Blog 編集部I)