初めてのレコードプレーヤー PART.2
CDよりも高解像度なハイレゾ音源が話題になっている一方で、ここ数年アナログレコードの人気が高まっています。「はじめてのレコードプレーヤー」PART.2では中・上級モデルを使って、ちょっとハイクラスなレコードプレーヤーの基礎知識をご紹介します。
「はじめてのレコードプレーヤー」と題してレコードプレーヤーの基礎知識のご紹介をしていますが、今回はPART.2。
中・上級モデルを使って、ちょっとハイクラスなレコードプレーヤーの基礎知識をご紹介します。
ご案内役は今回もD&Mホールディングス マーケティンググループ川北 裕司です。
D&Mホールディングス マーケティンググループ川北 裕司
まずはずらりとデノンのレコードプレーヤーを4台ほど並べてみました。
左から
DP-1300MKIIM、DP-500M、DP-200USB、DP-29F
となっています。
前回はDP-29F(右端)とDP-200USB(右から2番目)をご紹介しましたので、今回はトップモデルのDM-1300MKIIM(左端)と
DP-500M(左から2番目)を例にして、レコードプレーヤーの基礎知識をご紹介しましょう。
レコードプレーヤー
DP-500M
(カートリッジ付属)
希望小売価格:85,000 円(税抜)
レコードプレーヤー
DP-1300MKIIM
(カートリッジ別売)
希望小売価格:200,000 円(税抜)
レコードプレーヤーはこちらから!
今回は入門編その2ということで、中・上級モデルを例にとってみましょう。
まずDP-500Mですが、このMは何かと申しますと、
マニュアルの「M」なんです。
前回のDP-29F、DP-200USBはフルオートでしたが、
DP-500MもDP-1300MKIIMも、アームの上げ下げ(リフトアップ・ダウン)をはじめ
機器の操作は全て自分で行います。
価格が高くなったのに機能が少なくなるのは、現在のデジタル機器からすると変な感じですが、
アナログレコードプレーヤーの場合、このグレードになるとむしろマニュアルのほうが多くなります。
もう1点、DP-29F、DP-200USBとの違いは、ターンテーブルの駆動方式です。
DP-29F、DP-200USBはベルトドライブでしたが、
DP-500MもDP-1300MKIIMはダイレクトドライブ、つまり
モーターが直接ターンテーブルを駆動します。
ターンテーブルを外すとこんな感じになっています。
ベルトドライブと比較すると、ベルトを介さずに直接モーターがドライブしますので、
回転精度や回転トルクが高い点が特徴です。
ただしベルトドライブ=安価なモデル、ではありませんのでここはご注意ください。
超高級ターンテーブルでもベルトドライブを採用しているものは非常に多く、
それぞれ一長一短があります。
ちなみにターンテーブルの裏面を観ると、このようにゴム張りになっています。
これは裏面振動吸収ラバーによる防振処理で、ダイレクトドライブ方式は
ターンテーブルがモーターに直結されていますので、
モーターが発する振動やターンテーブルそのものの共振が生じますが、それらを吸収しているのです。
さて、接続ですが前回お話ししましたように、
レコードプレーヤーにはフォノイコライザーが必要です。
DP-500MもDP-1300MKIIMもフォノイコライザーは内蔵しておりませんので、
フォノ端子のあるアンプに接続してください。
そしていよいよレコードをかけます。
その前に意外と忘れがちな基本ですが、
可能ならばダストカバーは外してしまいましょう。
ダストカバーは使用していない時のホコリよけですが、
レコードを再生するときには、ハウリングなどのノイズの発生源になってしまいます。
DP-500MやDP-1300MKⅡMはこのようにカンタンに外せるようになっていますので、
面倒くさがらずに取ってしまいましょう。
そしてレコードを回す前にアームと針の調整をします。
まずアームのバランスを取ります。
カウンターウエイトを左右に廻すと前後に移動しますので、
ほぼ水平になるように調整しましょう。
最初はちょっと苦労するかもしれませんが、慣れると難しくはありません。
アームを支えるように下から手を添えて、カウンターウエイトを少しずつ廻すといいでしょう。
また、針カバーが取り外し式のものであれば、カバーの重量分だけ重くなって
正確なバランスが取れませんので、バランスを取る前に針カバーは外してください。
針先が壊れる心配があるようでしたら、傷ついてもいいレコードを
ターンテーブルにセットして行うといいかもしれません。
バランスが取れたら、次に針圧を設定します。
針圧とはレコードの溝を針がトレースするときの圧力の設定です。
針圧は針によって指定の値が違いますので、説明書などを確認してください。
決められた針圧より高すぎたり低すぎたりすると、針飛びや音に歪みが発生したり、
レコード盤を傷めたり、あるいは針の寿命が短くなったりしますので
必ず指定通りに設定しましょう。
このバランスの取れた状態で、カウンターウエイトの前にある黒の部分だけ廻して、
アームの上部の「すじ」にメモリを「0」になるように合わせましょう。
次に、カウンターウエイトの本体(DP-500Mなら銀色の部分ですね)を
指定針圧の数字まで反時計回りに廻します。
DP-500Mの場合は、付属のカートリッジの指定針圧は「1.4」なので目盛りを1.4まで廻します。
次にこのダイヤルで「アンチスケーティング」を設定します。
この数値は通常、針圧と同じですので「1.4」にします。
ちなみにアンチスケーティングとは、アームをレコード盤の外側に引っ張る機能です。
レコードを再生しているとき、アームは回転軸の中心に向かって引っ張られます
(これをインサイドフォースと言います)。
その力を打ち消すためのものがアンチスケーティングです。
アンチスケーティングが効いていないと溝の内側に力がかかり、
ステレオの左右のチャンネルが正しいレベルで再生できませんので
必ず正しく設定してください。
ちなみにこのクラスになるとレコードプレーヤーの足の部分はフワフワです。
これは外部の振動を受けないためと、レコードプレーヤーの振動をほかに逃がさないためのもの。
そのために大型のインシュレーターが採用されています。
また、廻すと高さが調整できますので、前回お話ししたように
レコードプレーヤーの盤面を水平にするための微調整にも使用できます。
DP-500Mはこれで調整終了です。
DP-1300MKIIMはもう一つ調整できる箇所があります。
それはアームの高さの設定です。
というのもDP-1300MKIIMにはカートリッジが付属していません。
お好きなカートリッジをお使いいただけるのですが、
カートリッジはそれぞれ大きさ(高さ)がまちまちですので、
ここで高さを調整するようになっています。
高さがあっていないと、レコードに針先を下した際に前下がりや後ろ下がりになったり、酷い時にはカートリッジ本体の「お腹」がレコードにあたってしまいますので、前後方向に水平に針先がレコードに接するために、この調整機構がついています。
ちなみにカートリッジにはMM型とMC型があります。
MMとはMoving Magnet、MCとはMoving Coilの略です。
一般的なカートリッジはMM型ですが、マニアはMCを使われる方も多いです。
一般にMCの方が繊細な音まで拾うことができますが、
針交換が自分ではできず、カートリッジごとの交換になる、
針からの出力が非常に小さい、などの扱いにくさがあります。
カートリッジについてはまた後日、機会を設けてご説明しましょう。
機構的な面でのDP-500MとDP-1300MKIIMの違いはこれくらいです。
あとはほぼ同じだと言っていいでしょう。
ではDP-500MとDP-1300MKIIMでは何が違うのか、というと筐体なんですね。
スピーカーと同じように、本体の素材感が大きく音に影響してきます。
DP-500MはMDFという木材を素材にした中質繊維板ですが、
DP-1300MKIIMはそのMDFに突板として密度の高い天然の木材を張っています。
この筐体の素材の違いでずいぶん音が変わってきます。
このあたりがアナログの面白さと言っていいのではないでしょうか。
ではDP-1300MKIIMにMCカートリッジのデノンの超ロングセラーモデル
DL-103を装着して、
アナログレコードの音を聴いてみましょうか。
前回の入門モデルでは、音の太さ、アナログらしい暖かみを感じることができましたが、
DP-1300MKIIM+DL-103では、音の太さ、
暖かみに加えて解像度の高さが感じられるようになりました。
CDやハイレゾ音源とはまた違うテイストですが、
アナログレコードらしい、非常に味わい深いものだと思います。
今回は入門編ですので必要最小限のことだけご説明しましたが、
レコードプレーヤーには、ほかにも様々なノウハウや工夫があり、
それによって自分の好みの音を作り上げていく楽しさがあります。
はじめての方はもちろんですが、久々の方にはもう一度、
レコードプレーヤーの魅力を味わっていただきたいと思います。
(Denon Official Blog 編集部 I)