山内セレクション at audio union DAY
デノンオフィシャルブログの人気コンテンツ「デノンサウンドマネージャー山内セレクション」が試聴室を飛び出しました! 去る2月9日のオーディオユニオンお茶の水店で開催された「audio union day Vol.10」にて、山内セレクションを試聴イベントとして実施。公開の場での取材となった様子をレポートします。
デノンブログの「山内セレクション」がオーディオユニオンの人気イベントとコラボ!
楽器店が軒を並べるお茶の水でひときわ存在感を放つのが、オーディオユニオンお茶の水店。いつもはデノンの試聴室で行われている「山内セレクション」を、今日は試聴イベント「audio union day Vol.10」内の一イベントとしてとしてオーディオユニオンお茶の水店の店内で、大勢のお客さまを招いて行うことになりました。
いつもはデノンサウンドマネージャーの山内が厳選した音源を、編集部Iがたった一人で味わうという、贅沢な取材をしていますが、今回は多くのオーディオファンのみなさんと共に味わえると言うことで、とても楽しみです。
audio union DAYとは、「誰でも気軽にオーディオに触れ、音楽をお楽しみいただける一日」という趣旨で、オーディオユニオン各店で同日開催される大人気のイベントです。10回目を数える今回、お茶の水店では試聴会イベントとして「デノンサウンドマネージャー山内セレクション」をやりたいとお声がけいただきました。ありがとうございます!
試聴用のシステムはデノンの新たなフラッグシップモデルとして話題を集めているSX1 LIMITED EDITION。
店内1階奥のスペースを使い、スーパーオーディオCDプレーヤー「DCD-SX1 LIMITED」と「PMA-SX1 LIMITED」がセットアップされました。スピーカーはデノン試聴室と同じくB&Wの802D3(ローズナット)が使用されました。
定刻でイベントがスタート。冒頭、オーディオユニオンお茶の水店の坂本さんから「SX1 LIMITED EDITIONは音楽を聴いているとホントに楽しくなるオーディオです。それで今回はSX1 LIMITED EDITIONを開発したデノンのサウンドマネージャー、山内さんに試聴会をしていただければもっと音楽が楽しめるだろうと思って企画しました」と開会の挨拶がありました。
↑オーディオユニオンお茶の水店の坂本さん
そしていよいよ山内が登場。
「デノンブログで連載している『山内セレクション』という、私がオーディオで聴くと楽しいと思う曲をご紹介するコンテンツがあります。今回は試聴会の形で山内セレクションをご紹介します」。
機材の説明もそこそこにさっそく曲紹介へ。山内セレクション、スタートです。
ライブ版、山内セレクションがスタート!
山内:今日はまずハウス系音楽から聴いていただきます。ラスマス・フェイバーという、スウェーデンのアーティストの曲で、以前の山内セレクションでも紹介したものです。この作品はメロディアスで聴きやすく、そのセンスが現在の日本になんとなくフィットしている気がするんです。ダンスナンバーが多いですがピアノやマリンバなどのアコースティック楽器を使っていて、そのあたりも聴きやすさの一因かな、と思っています。
アーティスト名:ラスマス・フェイバー
アルバム・タイトル:Two Left Feet
~試聴~
山内:透明感があって、非常にクリア、クリーンな音ですね。聴いていて、とても気持ちがいいサウンドだと思います。
それでは次にウィリアム・ジャクソン&マッケンジーの作品をSACDで聴いていただこうと思います。今日試聴で使っているSX1 LIMITED EDITIONは昨年発売となったデノンのフラッグシップモデルなんですが、評論家の先生やメディアの方の感想でよく言われたのが「色彩感」がある、ということでした。これは倍音がよく出ている、音色の複雑な変化によく追従している、ある種の軽やかさがある、ということだと思います。そのあたりが楽しめるアルバムではないかと思っています。ぜひお楽しみください。
アーティスト名:William Jackson & Mackenzie
アルバム・タイトル:Notes from Hebridean Island
~試聴~
山内:ハープ、アコーディオンとか、バイオリンやリュートっぽい音など、非常に珍しくて個性のある楽器の音色の色彩感を楽しんでいただけたかと思います。
私は2015年にサウンドマネージャーになったのですが、今日のような曲を試聴会でかけると「オーディオの試聴でこんな曲を聴けるとは思わなかった、面白かった」と言われました。それがデノンオフィシャルブログの「山内セレクション」につながっていったところがあります。
ということで、次もちょっと珍しいんですが、エレクトロニカルのFrederic Robinsonのアルバムです。スティーブ・ライヒやジョン・ケージなどの現代音楽家に影響を受けているということですが、ボーカルがフィーチャーされていますので、聴いてみていただきたいと思います。サウンドスケープが良く見えると思います。
アーティスト名:Frederic Robinson
アルバム・タイトル:Flea Waltz
~試聴~
山内:いかがだったでしょうか。
さて次は声楽ですが、オッフェンバックという作曲家の作品です。アルバムはメゾソプラノ歌手のアンネ・ゾフィー・フォン・オッターのものですがオッターさんではなく、男性の声が出てくるトラックを聴いていただこうと思います。オーケストラの再生は、オーディオのいろんな性能が見える音源でもあります。音色についても歌声もあれば弦もあり、打楽器もあります。そして音場の前後左右、奥行きの再現性もわかります。とくにオペラやオペラッタでは歌手が舞台で移動する様子まで捉えられているものもあって、オーディオのポテンシャルが味わえる音源です。
アーティスト名:アンネ・ゾフィー・オッター
アルバム・タイトル:黄昏の中に オッフェンバック・アリア&シーンズ
~試聴~
山内:いろんなジャンルを聴いていますが、いかがでしょうか。アンプの方のPMA-SX1 LIMITED EDITIONはお店の方々から「スピーカーを選ばないオーディオだ」ともよく言われますが、これは音源を選ばないということと関係あるとも思っています。音源に対するニュートラルさ、ナチュラルさが、うまくワークするのではないかと思います。この音源でのオーケストラの拡がりもそうですし、冒頭で数曲聴いていただいたエレクトロニカルな楽曲でも音源が自由に動く、立体的に再現されていたかと思いますが、そのあたりは音作りの時に私が特に注意した点でもあります。
さて、さらにもう一曲クラシックをおかけします。スクリャービンというロシアの作曲家の非常に短い曲で、たった54秒ぐらいしかないんです(笑)。
スクリャービンはラフマニノフとモスクワで同級生だったそうですが、ラフマニノフのピアノがあまりにすごすぎて、ピアノは2位に甘んじたそうです。でもピアノの面白い曲、ちょっと前衛的な曲がたくさんあります。女性ピアニストのユジャワンなんかも自分の持ち味に合っていると思っているのでしょう、よく取り上げていますが、今日は先日演奏活動の引退宣言をした指揮者・ピアニストのアシュケナージュの演奏で聴いてください。
アーティスト名:アシュケナージ
アルバム・タイトル:焔に向かって~アシュケナージ・プレイズ・スクリャービン
焔に向かって~アシュケナージ・プレイズ・スクリャービン CD
~試聴~
山内:まるで一筆書きのような楽曲ですね。スクリャービンにはこのくらい短い曲は他にもあって、どの曲もとても面白いと思います。玄人受けしそうな作曲家といえるでしょうか。
山内:さて、今度はガラリと変わって若いUKのミュージシャン、トム・ミッシュを聴いてみましょう。
彼は歌だけでなく、ギターやバイオリンも演奏するようですが、ソウル、ヒップホップ、ジャズを非常にうまくミックスさせていて、アメリカのアーティストとはちょっと違う味わいがあります。一般にイギリスのミュージシャンはちょっとオタクっぽいというか(笑)、ルーツの音楽を引用したり参照する感じがあって、面白いですね。
今日聴いていただく曲はジャズボッサ風の「It Runs Through Me」です。彼自身この曲を「自分と音楽がつながっている感じが表現できたトラック」と言ってまして、かなり本人も気に入っているようです。途中でデ・ラ・ソウルのラップも入って来てそのあたりも聴きどころです。
アーティスト名:TOM MISCH
アルバム・タイトル:GEOGRAPHY
途中からは編集部Iもステージへ呼び込まれ対談スタイルに!
山内:ところで、今日はイベントをデノンオフィシャルブログのコンテンツにするために編集部のIさんが取材に来て写真撮影をしてますが、ぜひこっちに来てください!
●みなさんこんにちは! デノンブログ編集部のIです。いつも山内さんに選んでもらった曲を試聴室で私一人で聴いていてもったいないなぁと思ってました。今日はみなさんといっしょに聴けて嬉しいです。
では公開取材ということで(笑)、ここからはいつものようにかけあいでやらせていただきます。
山内:そうしましょう。ところで今のトム・ミッシュは聴いてみていかがでしたか。
●もう聴いていると楽しくて、楽しくて、じっと座っていられなくてつい体を動かしてしまうぐらいノッてしまいました。
山内:あの曲はオーディオ的には決してクリティカルなものはないので、音楽の楽しさやノリがわかりやすく味わえればいいと思います。
ところで欧米のオーディオの評論でよく出てくる言葉で「タイミング」というものがあります。デジタルですからタイミングもなにもない、とも思えますが、それでもディテールを深めていくとちょっとしたファインチューニングでより音楽のグルーブ感が出てくるということは言えると思います。
●SX1 LIMITED EDITIONはタイミングが素晴らしいので、グルーヴィーな曲を気持ちよく鳴らしてくれるんですね。さて次は何を聴かせていただけるのでしょうか。
山内:ひき続きUKでいきましょう。UKジャズを聴きます。Yussef Kamaalというロンドンの気鋭ジャズユニットです。
●これまた普通のオーディオの試聴会ではきけないような選曲ですね。
山内:たしかにこれも例によってメジャーではないかな……、とは思っています(笑)。最近のイギリスのジャズやファンクの最前線はソウル、ハウス、エレクトロなどいろんな要素を取り込んでクロスオーバーしているものが多いと思います。いまからおかけするYussef Kamaalは、人が叩いているのにドラムマシンでやっているかのような雰囲気を感じます。ドラマーとキーボーディストのアルバムですがそのあたりに注目して聴いてみてください。
アーティスト名:YUSSEF KAMAAL
アルバム・タイトル:BLACK FOCUS
~試聴~
山内:ある意味、70年代のマイルス・デイヴィスを聴いているような感じもしますね。
●たしかにそんな要素もありますが、これがエッジというか、いま一番コンテンポラリーなサウンド、という印象を持ちました。では次をお願いします。
山内:チャイコフスキー国際コンクールで優勝しているバイオリニスト神尾真由子さんを聴きましょう。神尾さんが弾くパガニーニのアルバムがあります。パガニーニは本人も超絶技巧のバイオリニストで、彼の作品には難曲が多いのですが、今日聴いていただくパガニーニの24の最終曲は、特に激しい曲なので、オーディオ的には厳しい面があります。それがどこまで再現できるかを聴いてみてください。また録音は2009年の2月ですが、レコーディングの際、エアコンのノイズが録音されないように暖房はヒーターのみだったそうで、とても寒かったという話でした。なんとなくそんな「寒さ」も感じられるかなと思います。
アーティスト名:神尾真由子
アルバム・タイトル:パガニーニ:24のカプリース
~試聴~
●まさに超絶技巧ですね。たしかに空気感がキリっとしていて寒そうな感じがしましたが、それがある種の緊張感のようにも感じられました。
それにしてもクラシック、ファンクも、コンテンポラリーなジャズも気持ちよく鳴っていると感じます。これは音楽が持つ魅力をそのまま再現できている、ということでしょうか。
山内:SX1 LIMITED EDITIONは開発期間が4年と長かったので、ほんとうにいろんな音楽をかけて、何となくひっかかるところがあるといじってみて、ということに時間をかけたので、いろんなタイプの音源に対応できているのではないかと思っています。
さて、次ですがマイケル・ジャクソンの「スリラー」を聴きましょう。
●今度は世界で一番売れた、超メジャーなアルバムですね。
山内:もう40年近く前の録音になりますが、今聴いても全く問題ないというか、むしろ非常に素晴らしい録音だと思います。80年代風の音づくりではありますが、音が非常にクリアでウォームです。高域、情報量などがどのくらい聴けるかに注目してください。曲は「ヒューマン・ネイチャー」にしましょう。
アーティスト名:マイケル・ジャクソン
アルバム・タイトル:スリラー
~試聴~
●世界で一番売れたアルバムでみなさんも曲をよくご存じでしょうから、SX1 LIMITED EDITIONの良さが良くわかっていただけるのではないでしょうか。
山内:1983年に発表されたアルバムなので、37年前になります。その後のマイケルの2000年代の作品を聴くと、より音がクリアにはなったと思いますが、録音技術としての基本的な部分はこの時点で十分に完成されていると感じますし、まだパソコンベースの録音にはなっていないので、有機的な感じや手作り感があって、非常にいい録音だと思います。
では次を聴きましょう。チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエバー」です。
●「リターン・トゥ・フォーエバー」もジャズの名盤中の名盤ですね。
山内:これはSACDを買ったのですが、数十年前、若い時にアナログでこのレコードを聴いた時の感動がそのまま蘇りました。1972年発売なので、48年前の録音ですが今聴いてもとてもリアルなサウンドです。きいみてください。
~試聴~
アーティスト名:チック・コリア
アルバム・タイトル:リターン・トゥ・フォーエバー
●パーカッションの音の生々しさがすごいですね。
山内:そうなんですよ。まさに生々しいという感じでした。さて今度はロックサウンドを聞きましょう。ベス・ニールセン・チャップマン。女性ボーカルですが聴いてみてください。
アーティスト名:ベス・ニールセン・チャップマン
アルバム・タイトル:ユー・ホールド・ザ・キー
~試聴~
●ボーカルも素晴らしいですがエレキギターのサウンドが伸び伸びとしていてとても気持ちよかったです。
山内:ではエルガーのチェロ・コンチェルトを聴いてみましょう。マリー=エリザベス・ヘッカーというドイツ生まれのチェリストでオーケストラはアントワープ交響楽団です。チェロはバイオリンとは違う味があります、ディテールとか奥深さとか、包容力があるところを楽しんでいただきたいと思います。
アーティスト名:マリー=エリザベス・ヘッカー
アルバム・タイトル:エルガー:チェロ協奏曲 他
~試聴~
山内:そろそろイベント終了時間になってきてしまいましたが、少し延長してもいいということでしたのであと数枚だけご紹介させてください。
私の個人的な趣味ですが、ハウスが好きで、仕事でさんざん音楽を試聴して帰って来ても、家でつい聴いてしまうのがハウスミュージックです。なかでも私がよく聴くのはゆったりとしたディープハウスというものです。エレクトロニカルな要素がある楽曲は、サウンドスケープと言いますか、空間に音のレイヤーが拡がっていく感じがあって、クラシックと同じように楽しめるんです。
●打ち込みの音楽であれば、音は空間のどこにも定位できるわけですよね。
山内:そうなんです。この音源ではそんな定位感、空間感を味わっていただきたいと思います。今日はシカゴのディープハウスの大物、ラリー・ハードを聴いてください。「Another Night」という曲です。
アーティスト名:ラリー・ハード
アルバム・タイトル:Love’s Arrival
~試聴~
●これはいつまでも聴いていられますね。
山内:ハウスミュージックがディスコと違うのは、サビっていうんですかね、普通なら曲にある起承転結みたいな部分が希薄で、ずっと曲が続いていくんですが、そのミニマルな良さというか、独特のノリ、トランス感が味わえるジャンルだと思います。
●いよいよ数枚で試聴会も終わりなので、最後にSX1とSX1 LIMITED EDITIONの違いを簡単にご紹介ください。
山内:SX1をベースとして、4年の開発期間をかけて作り上げたのがSX1 LIMITED EDITIONです。CDプレーヤーもアンプもそれぞれ400点以上のパーツを入れ替えているので、改良点はとても一言では言えないんですが、時間をかけてグレードアップを繰り返しました。
オーディオってある程度完成しても、また次が見えてきてしまうんです。それで延々とグレードアップを繰り返すわけですが、通常の製品であれば開発期間が限られていますから、そのタイミングで音をまとめることが多いのですが、SX1 LIMITED EDITIONは開発期間の終わりが設定されず、納得がいくところまで音作りができたので、ある意味辛い面もありましたが私が新しいデノンサウンドとして提唱してきた『Vivid & Spacious』が実現できたと思っています。
●ありがとうございました。
ということで、あと2枚紹介させてください。今度は今井美樹さんです。ユーミンのカバー曲を集めたアルバムから「卒業写真」を聴いてください。
今井美樹
アルバム・タイトル:Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics-
●今井美樹さんのボーカルがとても美しかったです。透明感があって、すごく魅力的でした。ではいよいよ最後の一枚をお願いします。
山内:2Lレーベルからノルウェーを代表するミュージシャンで結成されたホフ・アンサンブルの「Quiet winter night」というアルバムを最後に聴きたいと思います。これはノルウェーの教会で録音されており、音の拡がり感、空間感が味わえる音源です。
アーティスト名:ホフ・アンサンブル
アルバム・タイトル:Quiet winter night
~試聴~
山内:いかがだったでしょうか。この曲で本日の山内セレクションは終了とさせていただきます。長時間にわたり、ありがとうございました。
●みなさま、本日はありがとうございました。
オーディオユニオンお茶の水店 坂本さんミニインタビュー
●本日は山内セレクション at audio union DAY、ありがとうございました。とても楽しかったです! このどうしてオーディオユニオンデーで山内セレクションをやろうと思ったのですか。
坂本:SX1 LIMITED EDITIONはけっこう聴き込んだんですね。他社のアンプとも比べたのですが、とにかく音楽を積極的に楽しませてくれるアンプだなと思いました。
audio union DAYはお客さまに音楽を楽しんでいただくイベントでもあって、ライブをやることもあるんです。それなので次のaudio union DAYではぜひSX1 LIMITED EDITIONを作った人に音楽を紹介してもらいたいと思って、お願いしました。もちろんデノンオフィシャルブログの山内セレクションも読んでいましたので、あのコンテンツをこのイベントでそのままやっていただければと思ったのですが、今日は本当にそんな感じのイベントになって良かったです。またぜひお願いしたいと思います。
●私も山内さん選りすぐりの音源がお客さまと聴けてとても楽しかったです。ありがとうございました!
【取材協力】
オーディオユニオンお茶の水店
オーディオユニオン ウェブサイト
https://www.audiounion.jp
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(編集部I)