Envaya開発者インタビュー
ポータブルBluetoothスピーカーEnvaya DSB-200が、いよいよ発売となります。コンパクトなサイズにデノンならではの高音質を凝縮したEnvayaの開発での苦労やエピソードなどを、開発チームの並木 繁樹が語ります。
ポータブルBluetoothスピーカーEnvaya DSB-200が、いよいよ発売となります。
コンパクトなサイズにデノンならではの高音質を凝縮したEnvayaの開発での苦労やエピソードなどを、開発チームの並木 繁樹が語ります。
ディーアンドエム
CSBUデザインセンター並木 繁樹
■まずEnvayaのデザインコンセプトを教えてください。
並木:わたしたちはEnvayaのデザインのコンセプトを「スクイーズデザイン」と呼んでいます。
スクイーズとは「絞る」という意味で、Envayaの上部を握ることで背面にあるキックスタンドが開きます。
Bluetoothスピーカーは各社からたくさん発売されていますが、スクイーズデザインは他社にないユニークなコンセプトなのでチャレンジしました。
■デザイン的には丸みを帯びた親しみやすい形状が特徴的ですね。
並木:この製品には直線や平面の部分がほとんどなく、全体がラウンド形状となっています。
これはユーザーが見たときに実寸よりも小さく感じるようにする工夫であると同時に、カジュアルさ、柔らかさも演出しています。
また47.5mmと奥行きを薄くすることで、片手で持ちやすく、カバンにも”スルリ”と入るように工夫しました。
ただしサウンド面からいいますと、この形状には不利な面がありました。
内容積は大きいほうが音質は良くなるのに、角を丸めるとそのぶん内容積は減ってしまいます。
デザインと音質のバランスが難しいところでした。
■「デザインとサウンドのバランス」では、具体的にどのあたりで苦労しましたか。
並木:本体のサイズ、特に厚みですね。
設計チームが目指していた音質、つまり内容積を確保するには、今のサイズよりプラス3mmの厚さが必要でした。
しかしデザインを考えるとどうしても47.5mm(現在の厚み)を超えたくなかったのです。
では、全体の厚さを47.5mmに抑えたまま、音質を犠牲にする事なく内容積をあと3mm分確保するためにどうするか?
一番簡単なのはキックスタンドをやめることでした。そうすれば確実に3mmを確保できます。
しかしデノンとして初めてとなる、新たなコンセプトのBluetoothスピーカーですから、スクイーズデザインは捨てたくはありません。
そこで各パーツや構造を徹底的に見直し、0.1mm単位で細かく削っていくことで、
キックスタンドを生かしながら、かつ全体の厚さを増やさずに、なんとか3mm削ることに成功したのです。
■ デザイン面ではグリルネットが自分の好みの色に交換できる点もEnvayaならではの大きなポイントです。
並木:これは開発当初はなかった話なのですが、試作の途中で
「他の製品にはない特長がもっとほしい」という強いリクエストが営業サイドからあり、盛り込むことになりました。
実はこれが結構たいへんでした(笑)。本来であればサランネットは固定されており、お客さまが開けるものではないわけです。
それを簡単に開けられるような構造上の工夫、そしてサランネットを工具なしで交換できる仕組みを考えなくてはいけませんでした。
最終的に指で外せるようにサランネットの裏側に独特の形状のリブを作りました。
これは指で引っ張るだけでサランネットが外れるように工夫されています。
しかも引っ張るときに取り付けるためのホルダーで指を傷めないように保護のゴムもつけています。
さらにいえばフロントグリルも曲面なのですが、サランネットがその曲面にしっかりとフィットするように、
グリルの裏側にポストイットのような不乾性の接着剤が塗ってあります。
このあたりも、当初は想定していないものでしたし、初めてのものだったので、苦労した点でした。
■Envayaは見かけのイメージをはるかに超える、スケールの大きな音がしますが、サウンド面ではどんな工夫があるのでしょうか。
並木:工夫というより、「一番いい音が出る理想的な構造になるよう、真面目に取り組んだ」ということだと思います。
57mmのフルレンジスピーカーが2基入っていますが、マグネットにはフェライトを使っています。
実はフェライトよりネオジム磁石のほうが小さくて磁力が強いので、内容積を確保するには向いていました。
しかしフェライトを使ったものの方が、狙った音に近かったです。
そこで妥協せずにフェライトを採用しました。
また低音を出すための大型の100mmのパッシブラジエーターも、スペース効率のいい四角形などの変形のものではなく、
音質を重視した円形のものをフロントに搭載しています。
■なるほど、サイズで有利になるパーツや仕組みがあったとしても音については妥協しなかったということですね。
並木:我々はHi-Fiのメーカーですから、やはりサウンドが命だと思っています。
たとえばパッシブラジエーターにしても、その力を100%活かすためには密閉度が重要であり、
そのために工場ではすべての製品でエア漏れがないか丹念にチェックをしています。
また防振対策も徹底しています。
Envayaの形状はコンパクトですが、スピーカーが大きく振幅するので内部はかなり振動するんです。
振動を抑える工夫をしないと、ノイズが発生してしまいます。
そこで振動する部分に制振材となるクッションを貼るなどの手間をかけ、可能な限りの振動対策をしています。
音決めについても、決まった周波数で測定した数値だけでなく、実際の曲でも試聴を繰り返して、サウンドチューニングをしています。
そこに一番時間がかかりましたね。
測定用の信号と実際の曲では周波数特性やエネルギー成分が違うので
やはり最後は「耳」を頼りにサウンドを追い込んでいきました。
試聴で使った音源はいろいろありますが、2枚ご紹介するとしたら、1つはアデルの「21」、
それとダイナミックレンジを確認するために私がよく聴いたのが、塩谷哲さんの「Eartheory」というピアノトリオのアルバムでした。
アーティスト名:アデル
アルバム・タイトル:21
ホステス
アーティスト名:塩谷哲
アルバム・タイトル:EARTHEORY
ビクターエンタテインメント
■いよいよ発売となるわけですが、開発者としてはどのように使ってほしいと思っていますか。
並木:身近に置いて、ぜひ毎日使ってほしいと思います。
コンパクトだから、ノートパソコンの横に置いても邪魔にならないと思うんです。
音楽を聴くのはもちろんですが、Skypeなどを使うときもパソコンの小さなスピーカーだと相手が何を言っているかわからないと思うんですね、
でもEnvayaなら非常にクリアな音で相手の話を聞くことができます。
また我が家ではテレビの音声をEnvayaで再生してみました。実際に使ってみるとテレビよりずっといい音で再生できましたね。
EnvayaにはAUX入力もありますので、テレビの音声出力(またはヘッドホン出力)とステレオミニケーブルで接続するだけで楽しめます。
あと、これからのシーズンはバーベキューなんかも最高ですがEnvayaならバッテリー内蔵なので約10時間使えます。
一日中屋外で音楽が楽しめますので、人が集まる機会などにぜひお勧めしたいと思います。
■では最後に読者の皆さまにメッセージをお願いします。
並木:一般的にいってBluetoothスピーカーは、たいていスクエアな四角いハコの形状の製品が多いと思うんです。
実は設計者からすると、四角いハコのスピーカーは外寸に対して容積も効率よくとれるしパーツの組み込みも比較的簡単なんですね。
でもEnvayaであえて我々は、新しいカテゴリーのスピーカーとして、
「サイズは小さく、しかしサウンドは良く、さらにデザイン性も持たせたい」と3つのハードルを設定し、そこに挑みました。
ぜひ店頭でEnvayaが示している新しいサウンド、新しいデザイン、そしてコンパクトなサイズを体験していただきたいと思います。
Envayaスペシャルサイトはこちら。
(Denon Official Blog 編集部I)