PMA-2500NE開発者インタビュー
2016年1月に発表されたHi-Fiオーディオシステム「2500NE」。この新たなスタンダードモデルについて各開発者が語ります。まずは中核となるUSB-DAC内蔵プリメインアンプPMA-2500NEから。
2016年1月に発表されたHi-Fiオーディオシステム「2500NE」。
この新たなスタンダードモデルについて各開発者が語ります。
まずは中核となるUSB-DAC内蔵プリメインアンプPMA-2500NEから。
グローバル プロダクト ディベロップメント プロダクト エンジニアリング
村山 匠
プリメインアンプ
PMA-2500NE
希望小売価格:230,000 円(税抜)
詳細はこちらをご覧ください
■まず開発コンセプトから教えてください。
村山:まず音質面において現行製品であるPMA-2000REを凌駕すること。
そして、もう一つが最近増加してきたデジタル音源との接続性を高めるためにUSB-DAC、オプティカル、コアキシャルのデジタル入力を追加すること。
この2つが最大のコンセプトでした。
■PMA-2000REからは何年を経てのモデルチェンジですか。
村山:PMA-2000RE は2012年発売なので、3年でのモデルチェンジとなります。
■PMA-2000REはピュアなアナログ入力のみのアンプですから、この3年で急激にソースが多様化したことになりますね。
村山:はい。この3年で、ハイレゾ音源や配信音源などのデジタルのソースが急激に増えました。
ですから今回、先代のピュアなアナログアンプを音質面で凌駕するというのは結構大変でした。
デジタル入力を扱うということは、ノイズとの戦いが避けられません。
↑ リアパネルにあるデジタル入力端子
OPTICAL、COAXIAL、USB-DACの入力端子を持っている。
■そんなビハインドな中、音質を向上させるためにどんなことをしたのでしょうか。
村山:方法論としてはDCD-SX1,SX11の流れを継承した
「シンプル&ストレート」の哲学を突き詰めていく。
これが立脚点となりました。
■具体的には何をどうやってシンプルにしたのですか。
村山:まず従来までのフラットアンプとパワーアンプの2段構成をやめて、一気に45.5dB増幅するハイゲインアンプを採用しました。
それによって通す素子数も回路も減り、経路も大幅に短くすることができましたので構成がシンプルになりました。
■今まではなぜ2段構成だったのでしょうか。
村山:「プリアウトという機能を持つため」というのが大きいと思います。
プリアウトして、単品の別のパワーアンプにつなぐという用途ですが実際にこのクラスのアンプのプリだけを使って高級なパワーアンプと組み合わせるというユースケースは少ないと判断し、今回は音質向上のためにプリアウトは外しました。
■その他にシンプルにした点はありますか。
村山:今回電流リミッターを外しました。
それにより瞬時供給電流が従来の倍近くになっています。
つまりスピーカーを急激にバンと動かしたい時、電流をたっぷり使えるのです。
結果としてスピーカーのドライバリティが上がって、立ち上がりの早さ、スピード感が増しました。
特に低域ではそれが顕著に味わえると思います。
また、最終段の最終段のUHC MOS FETをドライブするドライバトランジスタの電流も上げています。
■リミッターはもともと保護回路ですから、単に外すわけにはいきませんよね。
村山:もちろんです。
別の方法である「温度検知による保護」の確実性が増したので、電流のリミッターを外すことができました。
具体的にはUHC MOSの熱を温度検出し、アンプの挙動を監視しています。
このあたりの技術はAVアンプで培ったものです。
■その辺も新世代感がありますね。デジタル入力の追加についてうかがいます。アンプに窓がつくのは初ですか。
村山:そうです。
デジタル入力を持った以上、ソースのサンプリング周波数がきちんと明示されたほうがいいので、ディスプレイに窓をつけました。
■デジタルに対するノイズ対策にはどんなものがありますか。
村山:主に4つの対策があります。
まずは物理的に輻射ノイズをブロックするためのハコ型の板金です。
黒い2mm厚の鉄板、その下に塗装のない鉄板、さらに金属のハコ。
全部で約5.5mm厚になりますが、この重い鉄板で囲まれたハコの中にデジタル回路を入れ込んでしまうことで、ここから発せられる輻射ノイズを遮蔽します。
↑デジタル回路は輻射ノイズを遮蔽するための分厚い鉄板にマウントされる
■次はどんな対策ですか。
村山:2つめは電源回路を経由して混入するノイズを遮断するためにデジタル回路専用の電源トランスを用意しました。
アナログ回路とデジタル回路の電源トランスを別に用意することで、電源経路からのデジタルのノイズ混入はなくなります。
そして3つめは、高速デジタルアイソレーターの搭載です。
信号の通信経路から入ってくるノイズに関してはアイソレーターで遮断します。
PMA-2500NEで採用しているアイソレーターは非接触型で、トランス・コイルを介して磁気によりデータ転送を行うので、入力側と出力側は電気的に絶縁された状態になります。
ですからノイズが伝わりません。
↑指先のあたりにあるのが高速デジタルアイソレーター。
このデジタル基板は分厚い鉄板にマウントされている。
■4つめ、最後のノイズ対策は何ですか。
村山:「アナログモード」というモードを搭載しました。
このモードではデジタル専用のトランスをAC側から切ってしまいますので、デジタル回路がオフになり、全くピュアなアナログアンプになります。
さらに「アナログモード2」もありますが、これはアンプのディスプレイも切れます。
ファンクションを切り換える時だけ点灯して表示し、すぐまた消えます。
■つまりアナログでしか使わない人には全くピュアなアナログアンプとして使えるわけですね。
村山:そのとおりです。
■次にサウンドの方向性についてですが、PMA-2500NEはどんな音に仕上がりましたか。
村山:2500NEシリーズ全体に共通することだと思うのですが、空間表現が大幅に豊かになりました。
■「空間感=スペーシャス」は前回のサウンドマネージャー山内氏のインタビューにも出てきたデノンのHi-Fiの新しいキーワードですね。
(デノンサウンドマネージャー、山内慎一インタビューvol.1)
ほかにはどんな点があげられますか。
村山:従来のモデルより音のスピード感が増していると思いますし、低域もスムーズになっています。
このあたりはシンプル&ストレート思想の徹底、リミッターの排除などが寄与しているのではないかと考えています。
■デザイン的にも洗練された新しさがあり、新世代感がありますね。ボリュームノブはSX1を踏襲しているように思えます。
村山:ボリュームはすり鉢状の美しい造形です。もちろんこれはSX1のイメージを継承しています。
私はアンプのボリュームノブって大事なものだと思っていて、なぜかと言うと、アンプって何するモノかを端的に象徴していると思うからです。
「音量調節しながらスピーカーを駆動する」ことなんですが。その本質がクローズアップされて、いいと思います。
■開発で苦労した点はどんなことですか。
村山:構想から立ち上がりの初期段階が一番大変だったですね。
特にデジタルを入れつつアナログ的なクオリティを上げるのが大変でした。
しかもデジタル入力が追加されたことで、回路面積的にはかなりサイズが大きくなっているので、それを基板に入れるのも大変でした。
アイソレーションも回路の最短化もあり、まるでパズル的な感じ(笑)。
またアンプの窓をどこに置くかも、いろいろ考え方がありました。
最終的に音的に一番影響がないだろうということで、この場所を選択しました。
■USB-DACもあることでいろんな使い方ができると思いますが開発者としてはどのように使ってもらいたいですか。
村山:デジタル入力やUSB-DACがついていますから、一台でいろんな繋ぎかたができると思うんです。
たとえばパソコンで音楽を聴く人は、USB-DACでPCとつなぐだけで
かなりいい音が楽しめますし、CDプレーヤーも古いモデルやエントリーモデルをお持ちなら、PMA-2500NEのデジタルインを使うことで、かなり音質面ではグレードアップできると思います。
またアナログレコードプレーヤーに関しても、MMもMCも対応しています。
アンプとしての素性が非常にいいので、アナログレコードもかなりいい音で楽しんでいただけるのではないかと思います。
このように、色んな使い方が楽しめるプリアンプなので、ぜひ一度店頭でごらんいただき、試聴していただきたいと思います。
(Denon Official Blog 編集部 I)