編集部でバーチャルサラウンド「DTS Virtual:X」を体験してみた。
ホームシアターはやってみたいけど、天井にスピーカーを設置するのも、部屋の後ろにスピーカーを置くのもなかなかハードルが高い……とお嘆きのあなたに、デノンブログでは2つのスピーカーだけでもイマーシブオーディオが存分に楽しめるバーチャルサラウンド「DTS Virtual:X」をご紹介します。今回は編集部が実際に試聴室で体験してきましたので、その様子をレポートします。
今回の試聴で使用したAVレシーバー
今回のナビゲーター
国内営業本部 営業企画室 田中
まず「バーチャルサラウンド」とは何か?
●今回は営業企画室の田中さんにお願いして、バーチャルサラウンドのひとつであるDTS Virtual:Xをデノンの試聴室で実際に体験させてもらうことになりました。田中さん、よろしくお願いします。
田中:よろしくお願いします。今日は新製品のAVR-X2600Hを使ってバーチャルサラウンドのDTS Virtual:Xと、バーチャルではない、DTS:Xと比較するかたちで体験していただきます。
●それは、楽しみです。その前に、まずバーチャルサラウンドについて教えてください。
田中:ホームシアターのサラウンドの方式は5.1や7.1といった数字で表されますが、これらはスピーカーの数を示しているんです。基本とされる5.1サラウンドであれば5本のスピーカーとサブウーハーが必要ですし、 7.2であれば 7本のスピーカーと2つのサブウーハーが必要になります。
さらに置き場所に関しても、正面、後方、そして最近のイマーシブオーディオといわれるDolby AtmosやDTS:Xでは、天井などに設置して上方向から音を出すスピーカーも必要になります。でもそれってなかなか普通のご家庭でセッティングするのは難しいですよね。そこで、少ないスピーカーの本数でも仮想的にサラウンドが味わえる方式が用意されています。それがバーチャルサラウンドと呼ばれるものです。
●基本な質問ですが、バーチャルサラウンドはなぜ少ないスピーカーでもサラウンド感が出せるのでしょうか。
田中:バーチャルサラウンドでは、人間の聴覚の特性を利用した技術によって、少ないスピーカーでサラウンド感を生み出しています。人間は左右の耳への音の到達時間のずれや、音量差、音色の差異をとらえて音源の方向を認識しています。これを逆手にとってあらかじめ加工した音を再生すると、前から来ている音なのに、後ろや頭上から音が聞こえているように感じさせることができるんです。
●バーチャルサラウンドでは、どんな方式のものがあるのでしょうか。
田中:いま、サラウンド技術が大きく進化していて、イマーシブオーディオと呼ばれるDolby AtmosやDTS:Xでは上方向からの音もあります。上方向からの音も表現できるバーチャルサラウンドの方式としてはDTS Virtual:Xが挙げられます。またDolbyのDolby Atmos Height Virtualizerも発表されています。デノンのAVアンプでは先日発売したAVR-X2600H、AVR-X1600Hがアップデート対応する予定です※。
※アップデートの実施時期につきましては別途お知らせいたします。
DTS:XとDTS Virtual:Xを実聴して比較してみる
●ではバーチャルサラウンドを体験させてください。
田中:今日はまずDTS:Xの音を先に聴いて、その後でDTS Virtual:Xを聴いてみましょう。
↑まずセンタースピーカーとサブウーハーのない4.0.2でDTS:Xを試聴
↑試聴したDTS:X用のトレーラーコンテンツ
●(実聴して)素晴らしいですね。左右だけでなく、後ろも上からも、様々な方向からの音が聞こえて、イマーシブオーディオならではの臨場感あふれるサウンドです。
田中:それでは次はフロントのスピーカー2本だけで、バーチャルサラウンドであるDTS Virtual:Xを使って再生してみましょう。
↑スピーカーの構成をここで設定する。フロントの2つだけを使用する設定
田中:ではさっきと同じコンテンツをDTS Virtual:Xで聴いてみてください。切り換えは簡単で、この画面でDTS Virtual:Xを選ぶだけです。
↑AVR-X2600Hのフォーマットの切り換え画面。下から2番目のDTS Virtual:Xを選択
●(実聴して)ほとんど同じぐらいに感じられるほどサラウンド感がありますね。私としては、ほとんど遜色を感じないレベルです。それにしても不思議です。どうして後ろから音が聞こえてくるのでしょうか。
田中:たしかに前にしかスピーカーがないのに、後ろから音が聞こえてくるのは不思議ですよね。左右に関しては、左右の耳への到達時間や音量差で操作できますが、前からの音か、真後ろからの音は耳への到達時間が同じなのでより難しいんです。
でも実際のところ、後ろからの音は頭の形や、髪の毛、耳たぶの形状などの影響で、前から聴こえる音とは音色が変わります。これらの伝達特性(頭部伝達関数)を利用して後方や頭上からの音を再現しているわけです。実際の処理に関しては、各社が独自に開発しているため、一口に「バーチャルサラウンド」と言っても出てくる音はフォーマットによって異なります。それを聞き比べてみるのも面白いと思います。。
●DTS:Xを体験してみて、本当にリアルで驚きました。
田中:これは実際に体験してもらわないとわからないことなんですが、最新のバーチャルサラウンドは一昔前のバーチャルサラウンドとは比較にならないほどよくできているんです。今回はそこをぜひ体験してもらいたいと思いました。
Dolby Atmos Height Virtualizerで、一気にバーチャルサラウンドで楽しめる作品が拡がる。
●バーチャルサラウンドでもこれだけリアルにイマーシブオーディオが楽しめるのであれば、個人としてはスピーカーを無理して並べなくても十分という気がしました。
田中:そうはいってもバーチャルの音は合成されたものですから、実際にスピーカーをセットした方がより高音質であることは事実です。でもDTS:Xで作られた作品をDTSがきちんと作ったバーチャルサラウンドであるDTS Virtual:Xで聴くと、これだけのクオリティで聴ける、ということも同時に言えると思います。
実際のところ、質があまりよくないスピーカーで、適切ではない置き場所にセットするぐらいなら、バーチャルサラウンドの方がいい音で聴ける場合もあります。ホームシアターを始めようとしたときの最大の障害は、たくさんのスピーカーが必要で、その置き場所も後ろだったり、天井だったりするところだと思います。
ですから、まずは2チャンネルのステレオ接続の状態でDTS Virtual:Xを使ってイマーシブオーディオを体験していただきたいと思います。
●実際のところ、サラウンドの楽しさや迫力って、体験しないとわからないですよね。
田中:そうなんですよ。DTS Virtual:XやDolby Atmos Height Virtualizerは、いわゆるエントリーモデルのAVR-X1600Hにも、そしてミドルクラスのAVR-X2600Hにも搭載されています。DTS Virtual:Xは、様々なスピーカーセッティングに対応していますから、3.1で設定すればなら後方と上方向だけがバーチャルとか、5.1なら上方向だけがバーチャルといった使い方ができます。
最初は2チャンネルでバーチャルサラウンドからはじめていただいて、次はリア、そしてイネーブルドスピーカーで上方向、と少しずつスピーカーを増やしていただくのがいいかもしれません。
●ちなみに、フロント2chの次にスピーカーを追加するとしたらセンターですか。
田中:いや、センターよりリアのLRを追加するのがいいんじゃないでしょうか。実際のところ、センタースピーカーに関しては、聴き手が一人二人であれば必須とまでは言えません。ステレオの左右のチャンネルでセンターはしっかり定位しますし、その場合であれば映画館のように画面の真ん中からしっかりと台詞などの音が聞こえるので、むしろ一人であればそのほうがいいかもしれません。
ただ家族数人で観る場合は視聴場所が広くなるので、座る場所によってはステレオの左右のスピーカーだけではセンター定位が弱くなるため、センタースピーカーを使うんです。
●なるほど。では、ステレオスピーカーでまずはバーチャルサラウンドでイマーシブオーディオを味わい、気に入ったらまずリアスピーカーを買い足すのがいいんですね。
田中:それがいいと思います。
●今日はありがとうございました。
(編集部I)