飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「オーディオ、はじまりの、はじまり」
デノンブログでお馴染みのクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんは、大のオーディオ好き。しかしオーディオについていっしょに盛り上がれる女子が少ない……。そこでデノンオフィシャルブログと飯田さんとで女性向けオーディオ体験会を開催しました。題して「オトナ女子のオーディオ入門」。第1回はオーディオのはじまりの、はじまり。
オトナ女子のための、オーディオ・デビューへの道
こんにちは、飯田有抄です。私はこの2年ちょっとでどっぷりオーディオにハマってしまい、楽しくて、猛スピードでいろいろなことを吸収しながらオーディオ・ライフを満喫しております。
そんな中、ふと気がつきました。周りを見渡しても、なぜかオーディオで遊んでいる女性が少ない……、いや、いない! SNSなどで繋がるオーディオ好きの人も、みな男性ばかり。これはいったいなぜなのか。自宅で、ちょっといい音で、お気に入りの音楽を聴いて楽しむことに、本来「性別」はまったく関係ないはず。そりゃ、アンプやスピーカーなどは女性の筋力じゃ設置がなかなかしんどい重量のものもありますが、当然そういうものばかりではないし、いざとなれば、熱意でいろんな壁は越えられる!
クラシック音楽ファシリテーター飯田有抄さん
でも現実には、オーディオの世界って、なかなか「入り口」が見当たらないんですよね。身近に詳しい人(男性)がいたとしても、わりとマニアックな話をいきなりされてしまい、結局何が何だかさっぱりわからずじまい、ということも。それに、ゼロ一個どころか、二個も三個も多い想定外な価格帯の話が出てきて、ビビリまくってしまうなんてことも。なので、そもそものスタートができない、どこから手をつけていいのか、何を買ったらいいのかもわからないし、なんとなくスマホのスピーカーで聴き続けてしまう……そんな声も耳にします。
私自身はどう「オーディオ」に入ったかといえば、最初は完全に手探りでした(笑)。詳しい人に、あまりに初歩的なことを訊くのもちょっと気が引けるので、なんとか自分で調べられないかとがんばりましたが、オーディオ雑誌などを見ても私にはチンプンカンプン。オーディオ専門店には恐ろしくて足を踏み入れられないし……。でも、なんとか第一歩を踏み出そうと、まずはオーディオメーカーのブースがあるような秋葉原の巨大な家電量販店に、お気に入りのCD一枚を持って出かけました。片っ端からスピーカーを試聴したり、ブースの人にお話を聞いたりして、わからないなりに食らいついていきました。
飯田有抄さんのYouTubeチャンネルより
パチパチ鳴るレコードのお手入れ♪ アルカリ電解水で拭いてみた!♪レコード紹介付き♪
そうして最初に手にしたのはマランツのネットワークCDレシーバーと20年前の中古のスピーカー。予算10万円で揃いました。そこからは、広がりゆく「良い音」の世界に夢中になってしまい、今は6畳の仕事部屋にあれこれオーディオ機器がひしめきあっております(笑)。
だんだんと、同世代の女性たちともオーディオの話ができたら楽しいのにな、と思うようになりました。みんなが苦労する必要なく、学べる機会があったらいいし、どうにか仲間を増やせないかな、と思っていたところへ、このデノンオフィシャルブログで「女性のオーディオ・デビュー企画」をやりませんか?とお声がけをいただきました。やったぁ!
ということで、私のSNSから女性の友人たちに呼びかけたところ、「実はやってみたかった」「知識まったくナシ、ゼロから知りたい」「今の環境をよくする方法を学びたい」「でもどこから入ったらいいかわからない」といった書き込みやダイレクトメッセージが、嬉しいほど寄せられました。
私の友人たちなので、みなさんクラシック音楽に関わる専門職だったり、音楽文化に貢献したいと願って働く女性たちばかりです。今回は5名の方に参加してもらい、実際の機器に触ってもらいながらオーディオの基本のキを体験してもらうことになりました。
日頃、どんなふうに音楽を聴いてる?
某日、みなさんと一緒にデノンのオフィスのとあるお部屋に集合しました。まずは、今みなさんがどんな環境で音楽を聴いているのか、自己紹介を兼ねてお話ししてもらいました。
○ピアニスト 倉田莉奈さん
「ふだんはサブスクリプションの音源を聴いていますが、夫と小さな娘がいますので、家族に気をつかいながら、家ではヘッドフォンを使っています。でもそれだと、あまりリラックスができなくて、大きなスピーカーで鳴らすことに憧れを持っています」
○音楽ホール 職員 菅原英子さん
「職場の音楽ホールがとてもいい音響なので、もっと音について学びたいと思っています。自宅は壊れたミニコンポが、もう10年ほど放置してある状態(苦笑)。イヤホンではなくて、もっといい音響で家でも聴きたいので、オーディオ機器をイチから手に入れたいと思っています」
○コンサルタント 川野辺雪菜さん
「演奏活動をやっている友人がリリースしたLPレコードを買ったのですが、かける機器がなく(笑)、とりあえずデザイン優先でスピーカー内蔵の一体型のレコードプレーヤーを買いました。音質面まで考えが至っていなかったので、どうしたらもっといい音で聴けるか知りたいです」
○国際会議場職員 村山公美さん
「今は会議場で仕事をしていますが、前職はレコード会社でクラシック音楽部門にいました。自宅での音チェックはヘッドフォンなどでしていたんですが、オーディオが欲しいと思い、家電量販店でいろいろ試聴して揃えました。自宅の押し入れから発掘された古いレコードを聴くために、レコードプレーヤーも1万円くらいのボタンをポチッと押せば勝手にかかるものを勧められて購入しましたが、もっといい音で聴きたいなと思いはじめたところです」
○輸入ピアノ販売店 店長(取材当時) 熊田かおりさん
「普段は生演奏を聴くことが多いのですが、仕事柄、ピアニストの方々からCDをいただくことも多いです。でも今自宅にオーディオ機材がなく、よい機材をお持ちの方の家で聴かせてもらったりしています。どうしても自宅で聴きたいときは、DVDデッキを使ってテレビのスピーカーから鳴らしているのですが、どうにかしたいな、と。再現性の話題もよく出る業界ですので、環境を変えたいです」
音楽業界やそれに近いところでお仕事をされているみなさんですが、いろんな環境とニーズがあるようです。でも、「いい音で聴きたい」「そのために何が必要なのか知りたい」というモチベーションはみんな一緒です。
次回はみなさんの知りたかったことを公開します。
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。音楽専門雑誌、書籍、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジンなどの執筆・翻訳のほか、音楽イベントでの司会、演奏、プレトーク、セミナー講師の仕事に従事。NHKのTV番組「ららら♪クラシック」やNHK-FM「あなたの知らない作曲家たち」に出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。