飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「オーディオの基礎中の基礎を習ってみた」
デノンブログでお馴染みのクラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さんは、大のオーディオ好き。しかしオーディオについていっしょに盛り上がれる女子が少ない……。そこでデノンオフィシャルブログと飯田さんとで女性向けオーディオ体験会を開催しました。題して「オトナ女子のオーディオ入門」。第2回はオーディオの基礎中の基礎について。
第1回飯田有抄のオトナ女子のオーディオ入門「オーディオ、はじまりの、はじまり」はこちらから
ズバリ、オーディオの楽しみって何?
スマホで聴けるストリーミングサービスが便利な世の中、1〜2万円も出せばスグレモノのワイヤレス・イヤホンが買えて音もイイ。なのに、なぜ、わざわざスピーカーやプレーヤーなど、オーディオ機器一式を使うの?そう思う人が多くても当たり前の世の中かもしれません。でも今このデノンオフィシャルブログを読んでくれている方は、「だけじゃない」楽しみを知っていたり、興味のある人ですよね。
クラシック音楽ファシリテーター飯田有抄さん
もちろん、スマホだってイヤフォンだって感動できる音楽はある。しかし、あえてプレーヤーにアンプにスピーカーという、昔ながらのいわゆる「ピュア・オーディオ」のシステムを組む楽しみはどこにあるのでしょう。当然、「良い音で聴く」ということなんですが、それはつまり、自分なりの好きな音を作っていく楽しみなのだと思います。自分にとっての(←ここダイジ)音の「良し/悪し」の基準や好み、機器による「違い」は、もう体感して知るよりほかないわけですが。
そのポテンシャルはみんな持っています。子どもの頃に着せ替え人形で遊んだ女子は少なくないはず。ちょっとスカートだけ変えたり、ちょっと髪型を変えたりするだけで、ぐっとイメージが変わって、夢が広がるあの感じ。大人になって、ファッションやインテリアの組み合わせを楽しんでいる人は、オーディオの趣味とも、めちゃくちゃ相性がよいと思います。
自分ならではの「良い音」を生み出す仕組みをご紹介すべく、「デビュー企画」に参加された5名のみなさんに、まずはオーディオの基本機材の種類と役割をザッとご説明しました。
オーディオって、何が必要?
オーディオ知識ゼロだった頃の私は、昔ながらの「CDラジカセ」のように、ボタンを押せば音が出る機械、それがオーディオ機器だと思っていました。「わかる人」には、「わからない人」の「わからなさ」が「わからない」のかもしれませんが(笑)、そんなもんなのです。ラジカセで育ってしまうと、基本の機器だけでも下記のような種類があるなんて、ぜんぜん知りませんでした。
・プレーヤー
(CD、レコード、カセット、チューナー、ネットワークレシーバー、etc.)
最初の音の出どころです。CDやレコードといったメディア、近年ではネット接続によるストリーミング音源を「かける」機材です。アンプに接続します。
・アンプ
(プリメイン、プリ、パワー、フォノイコライザー、etc.)
プレーヤーからの音を「増幅」、つまり大きくしてスピーカーに伝えます。増幅は英語でamplify(アンプリファイ)。ここから「アンプ」と呼ばれています。
・スピーカー
(パッシブ/アクティブ、トールボーイ(フロアスタディング)/ブックシェルフ、etc.)
アンプからの音を実際に鳴り響かせる機材です。
・ケーブル
(ラインケーブル、スピーカーケーブル)
ラインケーブルは、プレーヤーとアンプをつなぐケーブルです。スピーカーケーブルはアンプとスピーカーをつなぐケーブルです。
基本はこれらの組み合わせで、どれを選んだり、組み合わせるかで、音がどんどん良くなったり変わったりするから、おもしろい。そんなお話をまずみなさんにお伝えしました。
それぞれについて気になる方は、Denonブログの「初心者シリーズ」を読みましょう!
オトナ女子がオーディオについて知りたかったこと
機器のお話をしている間に、次々と質問も繰り出されました。
例えばこんな質問です。
Q:アンプ類は、プリとパワーとフォノイコライザー、全部ないとダメ?
プリアンプとパワーアンプが一体型となった「プリメインアンプ」があるので(今はそれを使用する人がほとんどかも)予算や置き場所が限られていても大丈夫。フォノイコライザーが内蔵されたプリメインアンプやレコードプレーヤーなんかもあります。
Q:一体型の機材もあるのに、どうして別々に製品があるの?
入門者向けに扱いやすい「一体型」。でも何が“一体”になっているのか、実はわからないで使っている人も多いはず。なので今回は基本となる機器をご紹介しました。それぞれが別になっている機器は、“専門職人”として仕事をしてくれます。一体型とは使っているパーツなどが違うため、性能がより高く、音のクオリティに歴然と反映されます。また、ひとつずつ買い替えもできるため、自分好みのカスタマイズもしやすいです。
それぞれの機器には、メーカーの設計思想が反映されています。たとえば、同じピアノという楽器でも、メーカーやブランドによって、まったく響きや操作性が違うように、オーディオ製品も、特定のジャンルが得意なものもあれば、オールマイティに使えるものがあるので、自分がどういう傾向の音楽を聴くかで選んでいく楽しみがあります。
Q:ネットワーク(オーディオ)プレーヤーって何ですか?
Wi-Fiや有線LANでインターネットに接続して、音楽を再生する機器です。今ではCDやレコードといったソフトを使わず、YouTube、Apple MusicやSpotifyで配信音源を楽しむ人が多いですよね。そのための機器です。私たちが日頃つかっているスマホやタブレットやPCも、いわばネットワークプレーヤーの役割をしています。ただし、スマホは電話もカメラもついた小さな機械ですが、ネットワークプレーヤーは音楽信号を受け取ることに特化した機器と考えられます。こちらも“専門職人”となるので、スマホで再生するよりも、ずっと豊かなサウンドで再生することができます。
Q:ラインケーブルやスピーカーケーブルの話があったけど、今の時代なんでもワイヤレス。ケーブルレスにはならないの?
もちろんオーディオ機器にも、ケーブルレスの製品が増えています。デノンにも、Denon Homeシリーズのように見た目は普通のスピーカーだけれど、実はそれ自体がネットワークに接続して、電源以外は何も線がないものもあります(昨今の「スマートスピーカー」の豪華版、と考えてよいでしょう)。
Q:ケーブルって、何を伝えているの?いろんな価格のものがあるようだけど、何が違うの?
Hi-Fiオーディオの世界には大きく分けて、プレーヤーとアンプをつなぐラインケーブルと、アンプとスピーカーを繋ぐスピーカーケーブルがあります。どちらも、音の情報を電気信号で送ります。導線の素材は銅や銀のものがあります。ケーブルの価格の差は、その銅や銀の純度だったり、使用量だったりで変わります。一概に太いものが良いわけではありませんが、水を流すホースと一緒で、より多くの情報を伝えるものを選ぶと、同じオーディオ機器で同じソフトを聴いても、これまたハッキリと音が変わります。
みなさん興味津々でお話を聞かれていました。でも、「百聞は一見にしかず」ならぬ「百聞は一聴にしかず」! 次回は、実際に機材を扱いながら、いよいよ試聴タイムです。
(第2回おわり)
飯田有抄 プロフィール
東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Macquarie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。音楽専門雑誌、書籍、CD、コンサートプログラム、ウェブマガジンなどの執筆・翻訳のほか、音楽イベントでの司会、演奏、プレトーク、セミナー講師の仕事に従事。NHKのTV番組「ららら♪クラシック」やNHK-FM「あなたの知らない作曲家たち」に出演。書籍に「ブルクミュラー25の不思議〜なぜこんなにも愛されるのか」(共著、音楽之友社)、「ようこそ!トイピアノの世界へ〜世界のトイピアノ入門ガイドブック」(カワイ出版)等がある。公益財団法人福田靖子賞基金理事。